十三日間
十日目 「俺」
「くくっ…ははっ」
かなりうかれた笑いで、俺は目覚めた。
あたりには、やはりラベンダーの香り。

俺は、さらに夢の内容を思い出していた。

ラベンダーの香りを紡ぎ出すのは、小さな小瓶。
それをくれたのは、彼女…。

彼女?

俺は慌てて身を起こした。

てっきりミライの事だと思っていたが、夢の中では違うようだ。
というより、俺は誰か違う人間になっている気がする。

違う人間の人生を、夢に見ているような、それは奇妙な感覚だった。

必死に思い出そうとするが、彼女の顔も、夢の中での自分の顔も思い出せない。

俺なのに、俺じゃない。

夢の中での俺の顔は、思い出せないけど、俺の顔じゃなかった。
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