十三日間
「出ろ」

昼前に、じぃさんの部屋の前で、そう言う声が聞こえてきた。

…時間だ!

俺の心臓も、早鐘を打つ。

部屋の外に出たじぃさんは、すぐに歩き出さず、何か言っているようだった。
俺の部屋からは、何も見えない。
じぃさんの部屋は、俺の部屋よりも、階段に近い方にある。
だから、じぃさんはそのまま歩き去っていってしまう筈だった。

だが。

「さようなら、だ」

俺の部屋の前に、両手を縛られ、足を繋がれたじぃさんが歩いてきた。

俺に、挨拶しに来たってワケか。

俺はじぃさんに笑いかけると、
「二日後に逢おう」
と言った。

それが、じぃさんの最初で最期の姿だった。

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