十三日間
教室に入ると、すぐに大木みくるの姿を探す。

…まだ来てないや…。

張り切っていただけにちょっと出鼻をくじかれる。
いやいや、そんなんではダメだぞ、僕!

一人で気合いを入れていたら
「おはよう水瀬くん。昨日、どうだった?」
後ろから先制攻撃された。
…いや、攻撃じゃないけどね。
「あ、大木、おはよう」

とりあえず爽やかにあいさつ。好感度アップにはあいさつから!

「スゴイね、あれ! きいたみたいだよ!」
「ホント~!?」
「うん。今朝は寝覚めが良かったんだ。マジありがとっ」
「わぁ、良かったぁ! エラそうにあげちゃって、効果なかったらどうしようって思ってたのっ」

僕の事を、気遣ってくれてたのかぁ!

「朝にはあんまり匂いが残ってないのも助かっちゃった。さすがにずっと匂いがしてるのはね~。女の子の部屋ならいいんだろうけどさっ」
「そうだよね。寝るときだけの方がいいよね」
「うん。貰ったヤツ、スゴイいい感じ」
「喜んでもらえて良かった」

ここで何かお礼の話を切り出すかっ!…と思ったら、邪魔が入る。

「みくる、おはよう! 昨日のドラマ見たぁ?」
クラスの女子が割り込んで来た。
「あ、見た見た! じゃね、水瀬くん」
あっさりそう言って、大木みくるはその女子とドラマの話で盛り上がり始めた…。

………撃沈。


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