十三日間
秀悟と別れて家に帰ってから、僕はひたすら告白のセリフを考えていた。
でも、ホントはあまり考えすぎない方がいいのは判ってる。
多分明日になったら、考えたセリフは全部どっかにいっちゃって、その場の勢いで言うんだろうってことも、なんとなく予想はついてるんだ。
でも、考えておかないとそれはそれで不安だし……。

僕が部屋で一人でうなりながら考え、ぶつぶつしゃべったり、リハーサルで鏡の前で話してみたりしていたら、部屋がノックされた。
「なに?」
部屋から声をかけると、ドアが開いて、隙間からおそるおそるって感じで兄さんが顔を覗かせた。
「何へんな事してんの?」
僕が話しかけると、兄さんはゆっくり部屋に入ってきた。
「…誰もいない? 変な話し声がさっきからするからさ……」

……僕のリハーサルの声だ。

僕は頭をかきながら、兄さんにリハーサルの話をした。
「それで、告白することにしたわけだ。秀悟、やるなぁ」
兄さんは、感心したように腕を組みながら、しきりに秀悟を褒める。
しょっちゅうお互いの家を行き来している僕と秀悟は、お互いの家族からも家族扱いを受けていた。
「でもそのアドバイスは正しいな。ストレートが一番」
腕組みしたまま、うんうんと兄さんが頷く。

兄さんは、弟の僕からいうのもなんだけど、かなりのイケメンだ。僕だって、そんなに悪い方ではないけど、可愛い系だから、イケメン、てのとはちょっと違う。
背も高いし、性格もいい。

とりあえず、モテるんだ。

「俺もね、告られるなら、ストレートに『好き』って言われるのが一番嬉しいもんな」

ほらね、自分が告白する立場で考えないで、告白される立場で考える当たりが、モテるヤツって感じ。

でも、そっか。
やっぱりシンプルが一番なんだね。

「ありがとう、兄さん。参考にするよ!」
僕が素直に喜んで礼を言うと、兄さんは嬉しそうに笑って、「頑張れよ」と僕の頭を小突いてから部屋を出ていった。

なんだかんだいって、ちょっと歳の離れた弟を可愛がってくれてる優しい兄貴なんだよね、兄さんは。
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