囚われジョーカー【完】




ダークグレーのスーツに、ネイビーブルーのネクタイを緩めに付ける三浦さんは少しだらしないがそれが妖艶な雰囲気を醸し出す。




「お仕事帰りですか?」

「いや。取引先のオジサマ達とパーティー帰り。」

「…へえ。」



だから歩きなのかと、納得。

お酒を飲んだ以上は社長息子だろうと飲酒運転は許されないし。当然だろう。



三浦さんは私の横に並ぶと、気怠げにポケットから煙草を取り出し流れ作業のようにジッポで火をつける。


瞬間、紫煙の香りが深く私の鼻腔をくすぐった。




が。

何時もと違うそれに私の眉は些か怪訝そうに寄った。



「…煙草の銘柄、変えました?」

「ん?…ああ、いつものやつ売り切れてたから。」

「…。」

「なんだ?これ、嫌い?」



そう言って首を傾げる三浦さんに、私は小さく首を横に振って応える。





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