囚われジョーカー【完】




夏が終わる、風は生温いものから少し冷たさを孕んだものへと変わってきていた。


だが三浦さんの指は、年中変わることなく冷たいまま。体温が低いのだろう。



「なあ、菫。」

「はい?」

「俺の部屋、来ませんか?」

「……、」



それは、初めての三浦さんからの『お家へのお誘いの言葉』で。

初めの内は食事に連れて行ってくれてた三浦さんも、最近では私の部屋に来るぐらいだった。




だから、嬉しさもあって。私は先の未来なんて考えもしなかった。


肩を並べて歩けば、長身の三浦さんとの違いは歴然。男と女の違いを実感した。




三浦さんの部屋は、至ってシンプルで。家具だって必要最低限のものしか置いていなかった。


まあ、これは結構予想通り。だって普段から三浦さんは余計な物を身に着けてないから。





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