囚われジョーカー【完】
理由?
そんなんは簡単、三浦さんの声色は至って真面目。それに、この人は私を裏切ることはしないと分かったから。
買い被りすぎと言われても、私の信じ方はこうなのだ。
通話を終了させると、手早く着替えを済ませてスタッフルームを後にした。
今日はお気に入りのショートカットブーツではなく、黒のニーハイブーツ。履き慣れないものとは、こんなに歩きにくいものなのか。
ああ、こんなことならいつも通りあのブーツにすれば良かった。
走れないことがもどかしく、苛々とする。
――――やっとのことで三浦さんの部屋がある大きなマンションの入り口まで到着。
走ったせいか、少し足首を痛めてしまった。これぐらいで情けない。
バッグから携帯を取り出すと、着信履歴の一番上にある名前に電話をかける。
3コール目でとられた通話の先から聞こえたのは、柔らかいそれ。