囚われジョーカー【完】



もう制服に身を包み、ネクタイを締めている清水くん。明るく笑っている姿はいつも通り。


でも、いつも通りではないと感じるのは私が清水くんに罪悪感を感じているからか。



緩い微笑みだけを返し、清水くんがいるロッカーとは反対側のロッカーへと回り鍵を差し込む。


ガタガタと五月蝿い音が室内に響き、いつもは陽気に喋りかけてくる清水くんも全くと言っていいほど口を開かない。




寂しいと言うより気まずい空気が二人の間に存在する。

話し掛けた方がいいかな、と悩んでいれば。遠慮気味に私の名を呼ぶ声がして返事を返す。



「あのさ、篠宮…。」

「うん…。」

「昨日、休んでごめん。人多かったんだろ?」



その申し訳なさそうな声色に、ここからじゃ見えないが首を横に振る。



「熱なら仕方ないよ。それより、お見舞い行けなくてごめん。」




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