囚われジョーカー【完】
早く歩け、と目で伝えてくる春海に睨むという何とも子供っぽい対抗意識を燃やすが。
小さく笑われてスルーされてしまった。
はあ、と吐き出した溜め息は嘲笑されるように空気に溶けて消えた。
エントランスを出た私たちは、一度チラッと目配せをした。
春海が駐車場へ車をとりにいっている間、私はこれからの自分の心臓が保つかどうか心配で。
その理由も、言ってしまえば同棲(しかも結婚を前提に)しているとすれば当たり前なのだ。
「(春海のご両親に、挨拶…!)」
つまり、現三浦グループの社長とその社長夫人となる。
ここで失態を見せれば、もしかしたら同棲を反対されるかもしれない。いや、最悪の場合付き合っていくことすら。
……そう考えたら、私も気が気じゃないということくらい分かって欲しいと言うのに。
春海は、そこら辺の事に関して私に気をつかってくれない。