囚われジョーカー【完】
「いらっしゃーい。私、瀬尾明日香です。」
「ども。」
「こんにちは。」
俺も一歩後ろにいる彼女も、さして高揚感のない声で挨拶を返して小さく頭を下げた。
瀬尾さんは、笑顔で俺と彼女を店内へと招き入れた。
レトロ感を基調とした店内は落ち着いていて、面接に来たときも思ったけどやはり雰囲気が好きだ。
改めてそう感じていると、いきなり肩に腕を回されて吃驚した。
「君、名前はー?」
「…清水、ですが。」
「そーかそーか、清水ちゃんね。」
「(清水ちゃん…?)」
犯人は誰を隠そう、あの子供みたいに無邪気に笑う瀬尾さん。バシバシと背中を叩いてくるもんだから普通に痛いんだけど。
あの、瀬尾さん痛いっすと控え目に声をかければ何故か爆笑され困惑。
今のにそこまで笑える要素がどこにあった?