。*雨色恋愛【短編集】*。(完)
「……奈央」
舜クンが、あたしと一緒にいなかった時。
光輝クンが、あたしを呼び止めた。
「…光輝クン」
「結婚、おめでとう」
「……ありがとう」
嬉しくないよ、光輝クン。
顔が笑ってないんだもん。
「……幸せか?」
「…うん」
「本当に、付き合って、キスして、結婚した
んだな。…良かった」
「…良かった?」
「…うん。良かった」
「…そっか」
「舜はまじでいい奴だし、舜が相手なら納得
できるから。…まだあきらめられないけど。
いつか、奈央の前で笑うから」
「…あたしだって。まだ、あきらめきれない
けど、あたしは舜クンが好きだよ」
「そっか」
そう言って、あたしに背を向けて歩いてく光
輝クン。
…そんな切ない笑顔しないでよ。
ギュッて光輝クンを後ろから抱き締めた。
…あたし、ダメな子だね。
ウェディングドレスを着た花嫁さんが、旦那
さん以外に抱きついちゃいけないよ。
「舜クンが好きだよ。けど…光輝クンのこと
を、一生愛してるよ」
「…俺も。けど、俺じゃなくて、舜を愛して
やって。あいつ、ずっと奈央を支えてきたん
だから」
「…じゃあ、それが次の約束だね?」
「…そうだな」
…光輝クン、声変わったね。
前の優しいボイスから、切ない、ハスキーな
ボイスになったんだ。
そっと、光輝クンから離れる。
なぜか、光輝クンの体温がなくなると寂しい
気がしてくる。
…さっきのキスもね。
きっと、光輝クンが相手だったら、そんなに
切なくなかったかもしれない。
「またね、光輝クン」
「あぁ。…また」
光輝クン…