。*雨色恋愛【短編集】*。(完)

手は汚さない

「先生っ」

「あっ、ほんとに来たのね。儚くん」

「当たり前だよっ。ねぇ、先生」

「ん、なに?」

「今日は、優理花って呼んでもいい?」

「えっ?」

「だって、先生って呼んでたら、明らかに変

でしょ?…ダメ?」

「いいよ」

「ほんとに?ありがと、優理花」

女なんて、みんなそんなもの。

自分が子供なら、大人っぽい、クールな人が

好きになるし、大人なら、可愛い感じを求め

る。

自分にないものねだり。

結愛は違ったよね。

自分の足りないところより、自分の良いとこ

ろを見ていた。

人のダメなところより、良いところを見てい

た。

だから、結愛を好きになったんだと思う。

だって、俺は女に興味ないし。

女って、なんか臭い。

香水とか。

だから、嫌いなんだ。

今いる、岡本もそう。

でも、結愛は違ったから。

素のままの結愛は、本当に可愛かった。

きれいだった。

だから、大好きなんだ。




「今日は楽しかったよ、儚くん」

「ほんとに!?じゃあ…」

「ん?」

「秘密…教えて?」

「えぇ~、秘密?」

「うん。いいでしょ?」

にこっと笑っておねだり。

…俺、気持ち悪っ。

「う~ん…いいよ?あたしね…数学の谷垣≪

たにがき≫先生と浮気してるのぉ。けど、谷

垣先生とは別れるよ」

「えぇ?なんで?」

「だって、あたし、儚くんが好きになっちゃ

ったし。いいよね?儚くん…」

「いいよ」

「じゃあ、あたし、別れるから」

「うんっ」






まだ、わかっていないのか。

あなたは大人なのに。

俺は、手を汚さない。

こんな奴には、直接手は出さない。






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