。*雨色恋愛【短編集】*。(完)
「奏歌ちゃん、バスケやってたの?」

「えっ?うん」

なんでわかったんだろう…?

「髪型が違うからだよ」

あたしが聞きたいことを、エスパーみたいに

読み取って、あたしの疑問に答えた。

「…俺に髪、縛らせて?」

「…うん。お願いします」

髪を縛ってもらうのは嫌じゃなくて。

むしろ嬉しくて。

あたしの後ろに立った、奏クンを意識しちゃ

って。

…ドキドキした。

奏クンは、縛っていたポニーテールをほどい

て、もう一度高い位置で結び直し、おだんご

にした。

「すご〜い」

男の技術じゃないよ。

「あっ…」

鏡で縛ってもらった髪型を見てると、ゴムが

あたしの物ではないことに気がついた。

ピンクのゴムに、ピンクのリボンの飾りがつ

いた物だった。

「このゴム…」

「…プレゼント」

ぶっきらぼうに言った、その言葉が嬉しかっ

た。

「…ありがと、奏クン」

「本当、俺の言いたいこと言うためだけに、

授業さぼらせて、ごめん」

そう言って、奏クンはあたしに背中を向け、

図書室のドアに向かって歩き出した。

…このままじゃ、帰っちゃう。

もう少し、話してたいよ。

…上手く、声が出ないよ。
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