。*雨色恋愛【短編集】*。(完)
「あっ、お兄ちゃん」

ここでお兄ちゃん登場。

「そいつ、誰?」

「え~っと、学年で1番頭の良い、明屋尚斗

クン」

「尚斗です」

ペコッと、お兄ちゃんに頭を下げる、尚斗ク

ン。

礼儀良いなぁ…

「暇なあたしに、勉強教えてくれるの」

「へぇ。奏歌は、男友達に恵まれてるな」

「えっ?」

男友達紹介したの…尚斗クンが初めてじゃな

かった?

「俺、夏喜クンにも会ったんだ。奏歌の見舞

いの時、梨那ちゃんと」

「そうなの…?」

夏喜クン、何も言ってくれないから、知らな

かった。

お礼…言わなきゃ。

「俺、陽。奏歌の兄です。尚斗クン、奏歌は

バカだけど、よろしくな」

「はい。けど、奏歌ちゃんは、バカじゃない

ですよ?理解力は高くて、あとは応用に慣れ

れば、すぐに順位も上がります」

…あたしの勉強、見たことないよね?

「俺、奏歌ちゃんのノート覗いた」

「えっ!?いつ?」

「帰り際。奏歌ちゃんが身支度してる時」

「あっ…」

気がつかなかった。

「じゃあ、また明日。さようなら」

あたしとお兄ちゃんに挨拶して、帰る尚斗ク

ン。

「すごい…あたしのノート見ただけで、あの

分析…」

あたしは、お兄ちゃんに向かって、そう言っ

た。

だって…あたしが苦手なのは、応用問題。

基礎は完璧なのに、応用がね…

「あぁ。あいつ、すげぇな」

お兄ちゃんも、うなずいた。

あたしの勉強の先生…だな。

学校の先生より、全然わかりやすそう。

「…あいつ、ここより、家、手前じゃねぇか

よ」

お兄ちゃんが、なにかボソッと呟いた。

なにを言ったか、今イチ聞こえなかった。

「ん?」

「いや、あいつさ…俺の知り合いの女子が騒

いでたんだよな。あたしの地元に、超イケメ

ンがいるって」

あ~、確かに。

尚斗クンはカッコイイもんね。

「でも、あたしは恋愛対象じゃないよ?尚斗

クンは、勉強の先生だもん」

「…あいつ、かわいそ」

お兄ちゃんがなにかを呟いたのは、あたしは

知りません。
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