。*雨色恋愛【短編集】*。(完)











「好きなんだよ…」













尚斗クンに、申し訳ない。

尚斗クンはずっと…あたしを助けてくれてた

のに、あたしは尚斗クンを裏切った。

大勢の人の前で、大きな声で告白してしまっ

たのが、恥ずかしい。

奏に…想いを伝えちゃったのが、後悔。

その想いで、あたしは廊下を走り去る。

「奏歌ちゃん!!」

「奏歌!!」

奏と尚斗クンの声がする…

「カナ!!待ってや!!」

「カナ!!」

「奏歌ちゃん!!」

マツ、ヒロ、夏喜クンの声もするけど…

無理。

戻れない。

バスケで鍛えた体力で…名一杯、走る。

廊下を駆け抜けて、あたしは、旧館の図書室

に着き、息を整える。

「…なんで、ここに来ちゃったんだろ」

「奏歌!!」

「奏歌ちゃん!!」

ふたりに追いつかれた…

「…奏歌、聞いてくれ」

「言うな!!これ以上、奏歌ちゃんを苦しませ

んな!!」

「…言わなきゃ、後悔するんだ」

「お前がだろ?奏歌ちゃんを、これ以上苦し

めたいのか?」

「…奏歌、俺は今までずっと、好きだった。

別れた時も…本心じゃなかった」

「えっ…」

あたしと、別れた時からずっと…

「俺、意地張って、別れちゃってさ…でも、

奏歌のことが、まだ好きで。メールしたくな

って、メールしてたら、ダチに見られて…恥

ずかしくって、冗談でバカにしてたとか言っ

たけど…それで、奏歌が自殺未遂するとは、

考えてなかった」

…自殺未遂、知ってたの?

「…見舞い行って、ブレスレット渡して。自

殺させちゃったのは、俺だって知って。もう

想いどころか…会うことすら、許されないん

じゃないかって。でも、奏歌が特進クラスに

入るって聞いて…俺も思わず、特進に来てし

まった。で、隣の席になって、席がえもした

のに、また隣になって」

…そんなこと、思ってたんだ。

「ワークを忘れた奏歌に、見せてあげようと

思った。そしたら、俺の方を奏歌が見てるの

に気がついて、思わず…好きって書いちゃっ

て。ごめん、奏歌。好きだ…」

「…奏歌ちゃん、大丈夫だから。自分の想い

を…伝えなよ」

…尚斗クンは、いつだって優しくて。

「…尚斗クン」

「ん?」

「すごく、好きだったよ。恋愛としてじゃな

かったけど…大好きだよ」

「ははっ。大好きな奏歌ちゃんに、そんなこ

と言われちゃ…俺も、叶わないよ」

「尚斗クンには…本当に感謝してる」

…大好きだった。

友達として、すごく、尚斗クンが好きだった

よ―…








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