。*雨色恋愛【短編集】*。(完)

君の夢 side拓也

儚…

お前が、漆星を追って死んでから、もう十年

経ったんだ。

俺も、仕事が定着してきたよ。

山梨…

あっ、友華≪ゆか≫とも、仲良くやってる。

俺、今だに、友華のこと、名字で呼んじゃう

んだよ。

…もう、同じ名字なのにな。

俺、友華と結婚したんだ。

お前のおかげだ。

「儚…」

俺、儚の墓に来ると、苦しいよ。

俺が止めてれば、今隣にある、漆星のお墓に

一緒に来てたかもしれないんだから。

けど、お前が、俺に素直に話してくれたこと

は、まじですげぇ嬉しかった。

「儚…俺な?」

俺、友華との間に子供ができたんだ。

しかも、双子の男と女。

すっげぇ可愛いんだぜ?

俺も友華も親バカなんだ。

…恥ずかしいぐらいにな。

俺、儚と漆星の子供も見てみたかった。

でも…

今、ふたりは一緒に幸せに暮らしてると思う

から、俺はなんも言わねぇよ。

友華、お前が死んだ後も、あたしが結愛のこ

とを、儚くんにしっかり言っておけば良かっ

たとか、いろいろ言ってたけど、心配すんな

よな。

俺が、友華と双子をずっと守るから。

漆星にも、友華のことは心配すんなって言っ

ておいてくれよな。

あぁ、儚。

今、お前なにしてんの?

やっぱ、俺、儚いねぇとつまんねぇよ。

最後の最後に、お前に冷たくして、ごめん。

それでも、親友だって言ってくれて、ありが

とな。

あ~あ。

俺、やっぱ儚の墓くると、泣ける。

毎回、泣いちゃってごめんな。

てか、こんな弱い親友じゃ嫌だよな。

友華も、双子も守らなきゃなんだ。

俺、強くなんなきゃな。

< 24 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop