。*雨色恋愛【短編集】*。(完)
また、笑い声が聞こえるのは、きっとあたし

の空耳ってことに…

「なんないっての!!離れろっ!!」

本日何回目かわからない、翔クンへヒットが

お見舞いされて…

もっと、笑い声が大きくなったのは、また気

のせいということで…

「中、博物館って感じしねぇな」

翔とあたしが、並んで歩いているのに、また

笑い。

「あぁ…これはっ、俊さんが改装したっ…か

らでっ」

笑いを堪えながら、説明する怜さん。

「俊兄すげぇ…てか、もう笑わなくていいで

すから」

「あっ、わりっ…」

と謝りつつ、まだ笑い続ける二人。

…この際、ほっておこう。

「てかさ、碧…」

「ん?」

「なんで俺ら、頭下げられてんの?」

いやそんなの…

「俺ら、幹部なんだし当たり前だろ」

「あ~、さすが桜吹雪組の、3代目。慣れて

るね~」

笑い終わった優さんが、皮肉そうに言う。

「……別に。慣れてなんかないですよ」

当たり前なだけ。

「まぁ、拗ねないで。碧、ここからは幹部専

用の部屋だから」

「そうなんですか?」

専用ね…

あたし、なにも知らずにズカズカと、うちの

中を歩いてたから。

「…俺、幹部なんかで……」

「いいんだよ。顔と同じく、可愛いこと言っ

てんね」

グシャグシャって、あたしのことの頭を撫で

た、怜さん。

「…顔と同じく、から先、余分です」

「ははっ。まぁ、元気出して」

「…はい」

…心配性なのは、女だから?

だから、ダメなのかな。

「…碧」

「あっ、龍さん」

いきなり呼ばれて、びっくりした。

「…ついて来い」

呼ばれたのは、また寝室。

…寝るの、好きなのかな?

「ここ、ベッドあるから…いつでも、使って

いい」

「……はい…?」

「左だけだから。使っていいの」

「はい」

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