。*雨色恋愛【短編集】*。(完)

-悲しすぎる伝説-


…知ってる?

あたしの瞳と同じ色をした、二人の悲しい伝

説。

あたしは、この話を聞いた時、悲しすぎて泣

きそうになった。

…悲しすぎる、愛の伝説。

あたしと同じ色の瞳を持っていたのは、おじ

いちゃんとおばあちゃん。

おじいちゃんは、桜吹雪組の1代目組長で、

おばあちゃんは、そのおじいちゃんの最愛の

人。

桜吹雪組はある日、どこかの組に、攻められ

ていた。

おじいちゃんが、負けるはずなかった。

若かったし、強さは、本当に有名なぐらいだ

った。

でも、相手のやり方が汚くて。

そこにいた、まだ赤ちゃんの親父を抱いたお

ばあちゃんに、銃を向けた。

そして…おばあちゃんは、親父を助けるため

に、弾に当たってしまった。

おばあちゃんは…死んでしまった。

おじいちゃんは、最愛の人を失った。

怒りに満ちていた。

おじいちゃんは、その組の奴全員を襲い、全

員を殺した。

その組みたいに、汚いやり方ではなく、素手

で全員を殺した。

もちろん警察に捕まったわけで。

殺したのが、10人を越えていて、いくら組同

士の喧嘩だと言っても、死刑になった。

そして…おじいちゃんも死んでしまった。

それは、愛によって起きた、悲しすぎる事件

で。

おじいちゃんの愛が、伝説となった。

でも、伝説はこれで終わりじゃなくて。

おばあちゃんは、死に際に駆け寄って行った

おじいちゃんに、こう言った。

“…愛してるよ”

おばあちゃんの愛の告白。

そして、おじいちゃんは、死刑により、殺さ

れて、息もできないような時。

“…俺もさ。愛してる。今から行くから”

そう、おばあちゃんに返事するように言って

から、息を引き取った。

…あぁ、おじいちゃん、おばあちゃん。

なんで、そんなに強かったの?

おじいちゃんたちの強さは、伝説で。

同じ瞳を持ったあたしは、恐れられた。

そして、女であることを、嫌みのように、ず

っと親父が言われていた。

あぁ、なんであたしは女なんだろう。

なんで…生まれてきた?

こんな苦しくて、辛いなら、生まれてきたく

なかったよ。

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