。*雨色恋愛【短編集】*。(完)

「……碧…」

俺は、そいつの名前を呼んだ。

そいつは、俺を見て、大きな瞳をさらに見開

いた。

なんでここに、俺がいるんだ?って、不思議

そうにしている。

俺が聞きたい。

なんで、碧がここにいる?

ここ…龍夜の溜まり場じゃねぇかよ。

…こいつら、碧が全員倒したのか?

…なんで、お前はそんなに強いんだ?

なのに…そんな寂しそうな顔で、笑う?

月を見つめて…なにを想ってる?

…三日月で、満月には負けてしまう、月明か

りが、余計碧を輝かせているよ。

銀色の瞳が…月の下で、強く、そして、寂し

そうに輝いてる。

碧が…俺に月を見ていた時と同じ、強くて寂

しそうな笑顔で、俺に頭を下げて、俺の前か

らいなくなった。

「…………待てよ……」

俺は、こんな消えそうな声で、なに言ってん

だ?

…なぁ、碧。

俺は、お前の瞳を見る度に、胸が締め付けら

れるんだよ。

辛くなんだよ…

苦しいんだよ…

なぁ、なんでだと思う?

俺、お前が女だって知って、納得した。

それは、お前が…

お前を、好きだからなんだ。

龍side終
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