。*雨色恋愛【短編集】*。(完)

あたしだけの言葉

「それでは、セリフを発表してください。そ

の際、セリフを書いた紙はこちらにお渡しく

ださい」

あ~!!

緊張で心臓爆発しそうだよ!!

あ~!!

あたし死んじゃう!!

お父さん、お母さん、あたしを育ててくれて

ありがとうございました!!

…死にたくない。

あたしは、この審査に合格して、光輝クンに

会うんだもん!!

「では先に、小林実穂≪こばやしみほ≫さん

が先に、発表お願いします」

「はい」

「じゃあ、お願いします」

「…はい」

返事をしたのは、審査員の中にいた、若い男

の人。

見た目からして、あたしと同い年くらい?

その人が、紙を持って、目を閉じた。

『俺が試合で勝ったら、俺と…』

えっ!?

この声…

「待って。あたしに言わせて。あたし、あな

たのことが好きです。あたしと、付き合って

ください」

『…わかった。ありがとう』

やっぱり、この声…

「…光輝クンだ」

カッコイイ…

若いんだね。

良かった。

「ありがとうございました」

あの人のセリフ、あたしとほぼ同じだ。

「では次、夕暮奈央さん、お願いします」

はぁ…

よし!!

「…奈央ね」

ぽそっとあたしの名前を呟いた光輝クン。

…なに?

あたし、変?

『俺が試合で勝ったら、俺と…』

「待って。それ以上言わないで」

あたしだけの言葉を…

「あたしは、あなたのファンだから。応援団

だから…今は、試合だけに集中して」

あたしは、マネージャー。

あなたは選手。

だから、あなたの邪魔はしたくないの。

『…わかった。ありがと』

あたしの精一杯の考え。

最後の最後に、この情景が浮かんできたの。

「…ありがとうございました」

あたし、なんか受からなくてもいい。

光輝クンの生の声を聞けたから。

あなたに会えたから。

自分の精一杯が出せたから。

光輝クンを見て…

本当の恋に気がついたと思うから。

「では、今から私共が相談しますので、しば

らくお待ちください。今日中に結果は出ます

ので、外出でもしてきてください。2時間後

にまたこの会場に来てください」

「わかりました」

ん~。

どうしよっかな。

彩希にでもメールしよっかな。

『彩希~

今、結果待ってるんだけど時間ない?

お茶しよ(*´∇`*)』

彩希~!!

落ち着かないから、来て!!

『いいよん(^ー^)

会場前に行くね!』

彩希、ありがと~!!




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