。*雨色恋愛【短編集】*。(完)
「奈央!!」

いつも通り、オシャレな格好をした彩希。

けど、急いで来てくれたから、行きを切らし

てる。

「彩希、来てくれてありがと」

「も~!!奈央は可愛いんだから」

大好きって言って、あたしを抱き締めてくれ

たんだ。

…ありがとう、彩希。

ファミレスに入ると、あたしは、正夢だった

ことを話した。

「で、奈央はなんて言ったの?」

「あたしは…」

『待って。それ以上言わないで。あたしは、

あなたのファンだから。応援団だから…』

「うん」

『今は、試合だけに集中して』

「って言った」

「うん!なんか奈央らしくっていいよ!!」

「…ありがと」

なんか、安心した。

彩希がそう言ってくれたから、後悔は残らな

い気がする。

「…もうすぐ、2時間経つね」

「うん。行かなきゃ」

「あたし、ここで待ってるから。受かって泣

くでも、落ちちゃって泣くでも、あたしの前

で泣いて。お願い」

「…うん」

この言葉に泣きそうになったよ。




「それでは、発表します」

…光輝クンが、その呼び声で紙を開く。

「合格者は…夕暮奈央さんです」

「…嘘」

それだけ言うと、光輝クンは部屋を出ていっ

た。

「小林実穂さんも、主人公ではありませんか

れど、出演していただきます。今後とも、よ

ろしくお願いいたします」

審査員のみなさんが頭を下げた。

あたしも、つられて頭を下げる。

「では、解散です。後日、またお手紙を送ら

せていただきます。では、さようなら」

あたしは、荷物を持って走った。




「彩~希~っ!!」




あたしは、一番の友の名前を呼び…


「ありがとぉっ!!」

感謝の気持ちを込めて、抱き締めた。
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