。*雨色恋愛【短編集】*。(完)

仕事場で涙

「お願いしま~す☆」

仕事に慣れてきた、今日この頃。

光輝クンにはあきれられてる様子。

「お前、もう少し大人しくしとけよ」

「あっ、光輝クン♪今日も、よろしくね」

「今日は、大事なシーンもあるんだから、仕

事に集中しろ。いいな?」

「はい!!」

「…はぁ」

「奈央ちゃん」

「あっ、窪野さん」

「あっちに監督さんいるから、挨拶行くよ。

ほら、光輝クンと遊んでる場合じゃない」

「あっ…はぁい」

「気安く名前、呼ばないでくれますか?俺、

あなたにそう呼ばれる筋合いないんで」

「あっ、ごめんね。…青葉クン」

「あっ、ごめんね。あたしもダメだよね?あ

たしも呼び方変えなきゃ」

あたし、光輝クンに青葉さんって呼べって、

前に言われてたし…

「…お前はいい」

「えっ…」

「…お前は今のままでいいから。監督に挨拶

してこいよ。行かなきゃなんだろ?」

「あっ、うん」

「でも窪野さんには、俺から話があるから待

っててもらってもいいですか?」

「…あぁ、いいよ」

なんで窪野さんに話?

まぁ、いいや。

とりあえず、監督に挨拶行かないと。

「監督っ」

「おっ、奈央ちゃん。今日も元気だね」

「いえいえ。今日もお願いします」

「あぁ、よろしくね。あっ、光輝は?」

「えっと、光輝クンは今、窪野さんと話して

ます」

…あたしは、光輝クンって呼んでいいんだよ

ね。

「そうか…光輝が大人、しかも男と話すなん

て、珍しいな」

「えっ?」

「いや、なんか光輝って、同世代の女の子と

か、大人っていうか…30代くらいの人とは、

話さないっていうか…話さないだったらまだ

いいけど、目も合わせないから」

…そう言われればそうだ。

あたし、彩希以外の女子と話してない。

先生も…極力話さないようにしてる。

「…確かに、そうですね」

「なにかないといいが…まぁいい。奈央ちゃ

んは映画に集中して。今日は大事なシーンが

あるんだからね」

「…はい」

集中…できるかな。

なんか、心配になってきた。




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