あやとり
「優ちゃん、具合が良くないんだって。だからわたし、アパートまで送っていくから」
「え、大丈夫なの?」
「うん、大丈夫。みぃちゃん、わたしは大丈夫だから、お父さんと家に帰って」
そう告げるのがやっとのように辛そうな顔をしている。
病室のドアを開けようとしたとき、優ちゃんがふらついた。
私はとっさに優ちゃんを支える。
「優ちゃん、大丈夫じゃないわ。外来で診てもらっていったら?」
本当に心配している母を見て決めた。
「大丈夫。わたしが送っていくから」
母が入院中でなかったら、私はこの場で優ちゃんの妊娠を母に話していただろう。
でも、私は口にしなかった。
入院中、白い壁、四角い部屋、早すぎる消灯時間、これらの中では、考えなくていいことまで、深く思考してしまうことを私は嫌というほど、経験してきたから。
いずれ、優ちゃんが隠しておきたくても、お腹が大きくなってくれば、ばれてしまうだろう。
だけど母が入院中の間は、約束どおり誰にも言わないでおこうと決めた。