あやとり
「昨日の、あれさ、教えてくれてありがとうな」
「えっ」
礼を言われるようなことを言った覚えはない。
むしろ、嫌な思いをさせたとばかり思っていたのに。
彼は少し照れ臭そうに空を見上げていた。
「ユウのお腹のなかの……あれ、俺の子」
すぐに言葉が返せない。
胸の奥のまた奥の方で何かがパリンと割れて、その破片が広範囲に刺さってしまった痛さ。
「お前が教えてくれなきゃ、俺、ずっと知らされないままだろうなって思ったよ。だからサンキュ」
首を横に振るのが精一杯だった。