あやとり

「ねぇ、それわたしも混ぜてくれない?」

口から勝手に出てしまった台詞に、自分でも驚いた。

「なんで?」

当然の問いだろう、とも思う。

理由まで思い付かない。

私だってびっくりなのだから。

「人数合わなくなるから、無理だよ。それに雅には大人の彼氏がいるから」

「直哉も一緒だったらいい?」

「……それって、みんな引くよ」

千春のほうが正論のような気がした。

いくら言うことを聞いてくれる直哉でも、この話には乗ってくれないかもしれない。

「大人の彼がいる人は、大人な彼と、大人なデートを楽しんで下さいよ」

千春の言葉がどことなく私を突き放しているように聴こえてきて、なんだか不愉快だった。

私はどうしてあんなことを言ったのだろう。

混ぜて欲しいなんて、昨日までなら絶対に言わなかったと思う。

昨日、あんな場面に出くわしたせいだ。

教室では見たことのない甲斐君を見たせいだ。

優ちゃんのあんな表情を見たせいだ。
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