あやとり
「土曜日の午後なら、大丈夫だよ」
なるべく笑顔で、明るい声を意識してそう言ったら、千春は意味深に笑った。
「え?」
「ごめーん。土曜日の午後に着て行く服を今日買うのよ」
顔の前で千春が両手を合わせて頭を下げる。
「あー、どこか行くの?」
「うん、ルナワールドパークにね、みんなで遊びに行くの」
千春の表情はなぜか得意気に見える。
途端に突き放された気になる。
「亜紀と由美ちゃんと、圭太と村井君と、あとね、甲斐君」
「甲斐君も?」
思わず、甲斐君の名前にだけ反応してしまった。
その反応を見て、千春は眉をピクッとさせた。
「意外だね、甲斐君ってそういうのに行きそうにないイメージ」
取り繕うように言うと、一呼吸置いて千春が私の耳元に手を添えながら小声で話す。
「実は、甲斐君を連れてきてくれるようにわたしが頼んだの。前から、ずっと気になっていたんだ。甲斐君のこと」
「……そうなんだ?知らなかった」
姿勢を直して千春は照れながらもにっこりと微笑んだ。
「そういうことなの。来週、詳しく話すね」