あやとり

もう勤続八年くらい経っているのに?

「……新しい職場に馴染んでから、話そうと思っていたのだけれど、言うきっかけが掴めなくって……。実は前の会社ね、辞めたの。先月から今の会社に勤めているんだ」

そんな話は聞いていなかった。

「これって、お父さんたち知っているの?」

「まだ言ってない。今度話しに行くよ。じゃあ、今日はごめん」

「優ちゃん!」

切られる前に大きな声で呼んだ。

優ちゃんが会社を辞めていたことを知らされてなかった。

知らせなくても構わない存在の私ということなのか?

こんなことでスイッチが簡単に入ってしまう。

「……なに?」

「高校生と付き合っていることも、そのとき言うの?」

自分でもなんて意地の悪い言い方だろうと思った。

甲斐君のことを〔高校生〕と言うことで思いっきり優ちゃんを責めているのだ。


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