あやとり
優ちゃんの言葉を聞く前に、私は次なる刃を振りかざす。
「絶対、言わないでよね。ショック死しちゃうよ。お父さんも、お母さんも」
彼女にいちばん深く痛手を負わせることが出来るのは自分だということに心のどこかで確信していた。
でも振りかざした言葉は止まらない。
「それでなくたって婚約破棄の一件で、わたしへの干渉が酷いんだから」
「そんな話なら、もう切るよ」
がっかりしているような、突き放すような言い方をされた。
〔高校生と付き合っている〕という言葉に対しての反論を優ちゃんはしていない。
そのことが私の中でぐっと大きく持ち上げられていた。
やっぱり甲斐君と付き合っているのね……。
そう思うと、もやもやが爆発しそうだった。
「優ちゃんと甲斐君じゃ、不釣合い。だって、一回り以上違うし、未成年だよ?なんか汚いよ、そういう大人。わたしだって千春に合わせる顔がないもの」
「わかってる。もう切るね」
「優ちゃん!」
今度も確実に私の呼ぶ声が届いているはずなのに、優ちゃんは電話を確実に切っていた。
優ちゃんが私の話を途中で投げた。
聞こうとしてくれなかった。
そんなことこれまでになかったのに、彼女はあっさりと遣って退けたのだ。