今宵は天使と輪舞曲を。

 そしてラファエルはどうやっても妹の思うとおりに動いてしまうのだ。

 メレディスは彼女自身が思っている以上の価値がある。穏やかな雰囲気と妖精のような無邪気さ。グレーの目は映し鏡だ。どの場所にも溶け込み、輝く世界に変化させてしまう効果がある。細く華奢な体はすぐに折れそうなほど頼りなげだ。ひとたび腕に抱けば守ってやりたくなる。彼女はラファエルの奥深くで眠っている母性を引き出すのが上手い。

「今、メレディスはラファエルの部屋に泊まっているの。自分の部屋の鍵は持っているんでしょう?」
 キャロラインはにやりとして続けた。
「早く手当てしてあげないとまた彼女の手、また出血するでしょうね」

 ラファエルは苛立たしげに妹を睨む。けれどもキャロラインは彼に怯えもしない。ブラフマン家は男子よりも女子の方が強いのだ。





 《わからず屋・完》
< 158 / 326 >

この作品をシェア

pagetop