今宵は天使と輪舞曲を。

 それはただ単純にラファエル以外の男性に触れられる嫌悪感が増しただけであって、過剰に反応しているだけなのかもしれない。メレディスは急に恥ずかしくなった。
 しかしその羞恥もすぐに打ち消された。ラファエルが腰を上げたからだ。

「……くそっ! よくも!!」
 彼が何を考えているのかは言わなくてもわかる。
「ラファエル! 何をするつもりなの?」
 メレディスはラファエルを止めるため、両腕にしがみついた。
「君を襲った奴らを殴り倒してやる!」
 低い地響きにも似た声は本当に彼のものだろうか。

「まだ猪がいるかもしれないのよ!?」
 ――それにあの連中も。
 メレディスの悲鳴にも似た声はさぞや耳に障ることだろう。男性がこういう時の女の声を嫌っているのは知っている。


 けれども今、彼を止めなければラファエルとは今後二度と会えなくなる可能性があるのだ。

「お願い、戻りましょう。わたし怖いの! 貴方を失いたくはないのよ。あの連中は猪に襲われて既に命を失っているかもしれないでしょう? お願い!!」

 メレディスは声を張り上げ、さらに懇願する。

「ラファエル!」
「……わかった。明日には兄さんが来てくれる。日が昇り次第奴らを見つけ、しかるべき場所に突き出して裁いてやる!」
 ラファエルは渋々頷くと、上着をメレディスの肩にそっと掛けた。それからふたりで馬に乗ると、ラファエルの屋敷へと戻った。



《拘束・完》
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