今宵は天使と輪舞曲を。

 不快そうに眉尻を上げたかと思えば頬を赤らめ、恥じらいを見せる。一瞬のうちに変化する表情は見ていて飽きない。


 とにかく、メレディス・トスカという女性をもっと知りたい。



 今夜はドナルド・グスタフ伯爵主催の社交パーティーだ。

 夫を亡くし、ろくに土地の管理もできない彼女の叔母エミリア・デボネは没落してしまった身の上からふたたび返り咲き、何不自由のない生活を送るため、実の娘二人を立派な紳士に嫁がせようと躍起になっている。――ともすれば、今夜開催されるグスタフ伯邸の社交パーティーにも彼女たちが姿を表す確率は高い。



 殆どの女性は世間体や外見ばかりを気にする。自分を着飾ることのほかに、自分がいかに優れているのかを世間に示すことこそが彼女たちの趣味だ。それはデボネ家の住人も同じだろう。

 そして何より愚かなのは、外見を着飾り、屋敷を切り盛りするばかりが良識のある淑女だと思い込んでいる貴族たちの考え方だ。そして彼ら、若しくは彼女たちは自分が如何に秀でているのかを他者に見せびらかす。そうなると自分の評価を上げるための自慢であったり、自分より劣っていると思われる者への愚痴が出る。


 挙げ句の果てには、夫は妻の愚痴から逃げるため、家の外に女を作り、妻はスキャンダルや他者からの風評を恐れて夫の浮気を知りながらも問い詰めず、素知らぬふりをして家庭を守るのだ。


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