前世と今~記憶の鎖~

パソコン

「……」

昼食も食べ終わり、優希は部屋でゆっくりと本を読んでいた
部屋には絵本から漫画、小説まで幅広く置いてある
静かすぎる空間に、コンコンというノックの音が聞こえ優希は読書をやめドアを開ける
そこには、痛みとの格闘に勝利したと思われる哲夫が立っていた

「優希、お父さんのお古なんだが…パソコン使うか?」
「パソコン!?」

優希はその話に思いきり食いついた
昔は、よく使っていたパソコン
だがパソコンは高いという認識から、買ってもらうわけにはいかない…と我慢していたのだ

「あぁ、使い方分かるか?」
「分かるけど…昔と変わってるところは分からんと思う」
「それじゃあ、まず部屋に持ってくるか」
「うん!」

哲夫は一度自室に戻り、パソコンを抱えて戻ってくる

「パソコンはテーブルに置くか…
他に置く場所もないし」

哲夫はそう言い、テーブルの上にパソコンを置く
見た目は、昔のノートパソコンだった

「うわぁ~、ノートパソコンや~♪」
「違うぞ?これは普通のパソコン
ノートパソコンは手帳サイズのパソコンの事だぞ?」
「…手帳サイズ?」

ほら…と、哲夫がポケットから手帳サイズの物体を取り出す
手のひらに収まるサイズのそれをパカリと開くと、液晶画面と必要最小限のキーボードがあった

「そんなに小さく!?!」
「あぁ…でもコレ大きい方だぞ?」
「…マジ?」
「大マジだ」

優希は物珍しそうにノートパソコンを見る
優希が生きていた頃にも、これくらいの機器はあった
でも、それは電子辞書だったり、メモを目的とした機能だけだったりする
昔…普通とされていたサイズが大きいとなると…今の普通と呼ばれるサイズがどれほどの大きさなのか、気になる優希だった
< 34 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop