恋愛不向きの彼の愛し方
「…………」


なんて言えばいいのかわからないでいると、いつの間にか哲也さんを叩いていた杏里がまたクルリと振り返った。


「あのね、怜香は素直で可愛くて喧嘩にならないの！私も四年も友達しているのに、喧嘩したことないんだからね！わかった？」


哲也さんを叩いていた手がまた海斗さんに向き、今度は腕を叩いている。


「なんか、ごめんなさい。いつもはこんなに説教じみたこと言わないのに」


「いいよいいよ。若いからパワー有り余っているだけでしょ？海斗も今日はどうした？変だぞ」


海斗さんに向けた言葉は哲也さんによって返されて、当の海斗さんは哲也さんを睨み付けていた。


「別にいつもと変わらないだろ？」


そう吐き捨てたあと、グラスを片手にイッキ飲みする。


「怜香はね、純粋なの。新聞の勧誘だって断れないくらいにね」


酔いに任せて杏里がおかしなことを口走ると哲也さんも海斗さんも杏里と私を交互に見やった。
< 11 / 31 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop