半分の心臓

入学式からもう３日経つ。
　
ボクはここで頑張るしかないのだ。
　　
自転車の後輪部には
煙星の黄色いシールが張りつけられ、

いよいよ
ここの生徒であるという実感を持たなくてはならない。
　
いくら、校長の演説に共感したからと言っても
『煙星』が刻まれていることはいまだに恥ずかしい証で

あまり見られたいとも思え、　
行きかう人々を馬鹿呼ばわりして、
見下して、その上見栄を張って。
　
そうでもしないと
自分がかわいそうに思えた。
　
今に見てろよ、お前達。
通学中に何度も何度も心の声が頭の中で反響する。
　
道を進むごとに聞こえなくなる声。
　
嫌がっていた学園に入学したことで
春休み中よりも安くなったプライド。
　
負け癖が板についた？
それとも新しい発見？
慣れってものは恐ろしい。
　
通学路を進むごとにいやな目は薄れていくのが自分でもよく分かる。
昨日よりも、一昨日よりも前に進みやすい。
　
それでもまだ、鼻炎のフリして見栄を張り続けている。
　
いったいボクは何を守っているのだろう？よく分からない。

朝は悩む。