半分の心臓
その後はいつもの問答を繰り返す。
 
「秋人、お母さんは?」
 
行きましたよ。仕事に。
 
「ふみきは?」
 
いつもの通り。
 
「またか・・・じゃ、頼むわ」
 
あいよ。
 
雨にも負けず
風にも負けず
夏の暑さにも
冬の寒さにも負けず
良くはなく
決して怒らず
 
たとえ、母親に寝床を荒らされても
なお眠り続ける我が弟ふみき。
 
「おかしい」
 
毎朝コイツの部屋にたどり着くと
母親が荒らした形跡がない。
 
きちんと整頓された布団に
何事もなかったかのような寝息。
 
震災の後、
見事に復興してしまった街のように整然としている。
 
朝、自分と同じような
仕打ちを受けているにもかかわらず
まだ眠りこけるこいつを少したくましく思う。
 
コイツを叩き起こした後
ボクはようやく学校へと向かう。
 
そう。。。
このときばかりは
母親の般若の面がボクに舞い降りるのだ。
 
「うりゃ~」
 
「ぐぇぇぇぇ~~~~~~」
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