半分の心臓
登校回想~入学~
まだ空気が冷たく感じる春、
教科書一杯詰め込んだカバンを
カゴへと放りこみ、
祖母からもらった自転車の
鍵を開けた。
 
カシャン
 
鍵が開く音は
これからはじまる淡い高校生活を
祝うかのようにさわやか響く。
 
両親に選んでもらった
黒光りしている革靴はどうも履き慣れない。
 
カツンカツン



つま先を叩きながら
首をかしげ
何度も何度もかかとを見てしまう。
 
着ている制服と
これは本当に
マッチしているのだろうか。
 
社会のルールはそんなもんだと説得されるものの
全身黒で統一されている中
足を曲げると裾から顔を出す靴下はどうも親父くさい。
 
今日から世の中の革靴が全てブーツにならないものかと少し期待した。
 
新品の自転車同様
高校に入学したばかりの主人もさぞ希望に溢れ
美しく輝いているいかと言われれば残念ながら大ハズレ。
 
ロックの外れた軽い音は
春休みの終了を告げる合図であると同時に
ボクの小さな胸を突く厳しい判決。
 
これから3年間、
不本意にも入学してしまった高校へ通う日々がやってくる。
もう終わってしまった過去が名残惜しい。
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