神様のイタ電
いち

電話が鳴った。
固定電話の、あの持ち運びに不自由なやつだ。
一度親機を取ってしまうと、子機のような自由もないし、しかもそういうときに限って長電話だったりする、あの電話。

三年くらい使って既に学習していた姫乃さんは、全力で子機までダッシュした。何しろ家が広いから、三つ四つ在るはずの子機までの距離が遠い。全力疾走しても先に切られることだってあるという、過酷な現実である。それなら親機を取ればいいのだが、親機なんぞ取ればいろんな意味での敗北を意味する。人間としてのプライドが、それを許すはずもないであろう。

「はいもしもしい!!」

何しろ乙女の恥じらいの欠片も無い電話への猛ダッシュだ、姫乃さんのこの勢いに気圧されて切ってしまう腰抜けも存在するらしいが、現在かけてきている奴は違うらしい。

「今日の天気を教えてください!!!」

声でけぇ!!じゃなくて、驚くべくはその電話の内容である。
え?天気?
てめえで調べろ。

「快晴です。雲ひとつ無く絶好の洗濯日和ですよ」

姫乃さんは当り前のように答え、突然般若の顔となって全力で電話を切った。

「いた電かちくしょおおおお!!」

姫乃さんの表情の切り替えの速さとその憤怒の形相に怯える。でも突っ込む勇敢な俺。

「ていうか何で答えちゃうんですかああ!!」

「てめえ!!聞かれたら答えるのが世間の常識だろうがボケ!!」

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