大江戸妖怪物語
壮大な氷の彫刻は、上で咲いている花火の色を映し出す。ときには緑、ときには赤、美しい水彩絵具のように見るたびに色が変わる。
「うわ!すげえ綺麗!!」
観衆から感嘆の声が漏れる。
「雪華・・・すごい綺麗だよ」
「ふん。粋な諮らいだろ」
雪華は無愛想ながらもすこし満足そうだった。
「あんな演出した覚えはねえが・・・まあいっか」
花火を打ち上げるおじさんは首をかしげていた。
「向こうの河川敷で見るか。おそらく・・・綺麗だぞ」
戦いを終えた僕らは河川敷に移動した。
しかし・・・
「うわっ・・・。空いているスペース無いじゃん・・・。どうしよう」
人ごみはとてもギュウギュウで進むのも戻るのも難しい。江戸の人口の多さを実感する。
「・・・神門。・・・ここはどうだ?」
雪華が指さしたのは、葉桜の上。おそらく登っても下から見えることはないだろう。僕らは高くジャンプし、その上に飛び乗った。
「うわあ、絶景!」
そこから見えたのは遮るものが何もない、美しい花火。いろんな色に輝きながら地面を照らしている。
「特等席・・・だな」
(雪華・・・笑ってる?)
横顔の雪華。花火が咲くたびに雪華の表情が見える。僕は花火ではなく、雪華の顔をずっと見ていた。
「何見ているんだ。気持ち悪い」
雪華に顔をギュッと押される。でも、とても楽しかった。ずっとこのドキドキが続きますように―――――