初昼の儀式
すると葉月涼、眉間に小さな皺を寄せ、視線を泳がせる。え、私も名前負け?そりゃ、結構綺麗な字は揃っているとは思うけどさ、葉月涼に言われたくないよ。私が閉口していると、思い出したかのように葉月涼が言った。

 「昔トラウマにいませんでした?」
 「何で知ってるんですか」
 「やっぱり。うち、りょうです」
と言われたところで思い当たることはない。じっと当時を巡らしていてもやっぱりない。うーんと唸ろうかどうしようか迷っている所に、彼の鞄からはみ出たチャイコフスキーのスコアが見えた。途端、7年前の諸々を思い出した。
< 7 / 47 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop