桜花~君が為に~

小柄な自分よりさらに低い彼の頭をぽんぽんと撫でる

「まぁ、俺も悪ぃんだし
んで、なんでんなに急いでたわけ?」
「あ、いや…あの馬鹿…じゃなくて
烝に呼ばれて…」

何故呼ばれているのか知らないのか
はたまた言えないのか
そこまで言って市村は黙ってしまった

丞といえば監察方の山崎烝のことだろう
市村とは仲が良いらしく
よく喧嘩をしたり話したりしているところを見かける

山崎とは悠輝もよく話す
主に沖田の病のことについてだが…

彼は悠輝以外に沖田の病を知っている唯一の人物だった

「それでは、失礼します」

もう一度礼をして
市村は廊下をかけていく

「また一緒に稽古しよーぜ!!!」

遠ざかっていく彼の背中にそ叫んで大きく手を振った


彼、市村鉄之助は
兄、辰之助と共につい最近この新撰組に
14歳の若さで入隊してきた少年だ

兄の辰之助は会計方
そして弟の鉄之助の方は
一番隊の隊士と土方の小姓を務める小姓隊士だ

悠輝にとっても良い弟分だった

まぁ、小姓としてはどうにもいまいちで
よくお茶を零しては土方に怒られている
その度かえのお茶を悠輝が入れなおす破目になる

それでも今まで兄弟をもったことのない悠輝にとっては
本当の弟ができた様で嬉しかった
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