空耳此方-ソラミミコナタ-
「さて、そろそろ見えるよ」
羽田に言われて目線を外に流す。
するとだんだん見えて来たのは、山と海しかない離島にはあまり似合わない、洋風で所々に凝った装飾の施された建物だった。
「ほぇ〜…スゲー」
「何か…美術館みたい」
口々に感想をもらすと、羽田は少し胸を張った。
「…美しいだろう?
……本当はね、君の言う通り騙し絵のアート館になるはずだったんだよ」
語る羽田は、少しだけ寂しそうだった。
そう、“はず”だったのだ。
こういう言い方をされれば、気にならない訳がない。
「何かあったんスか?」
炯斗が聞くと、羽田は一瞬驚いた顔をした。
呟きが漏れていたとは自覚してなかったのか。
羽田は苦笑しながら言った。
「いやぁ…この島にも開発の話が上がって、こうして色々やり始めたんだけど…その計画が途中でおじゃんになってさ」
なるほど、と頷いた。