空耳此方-ソラミミコナタ-



「アッハッハ、知らないで来たとは、君たちもなかなか大人物だねぇ…プクク…」

「いい加減、笑い止んでくれッス!」

三人は今、その男性・羽田悟(はだ さとる)の車に乗せてもらっていた。

三人の叫びが彼方に消え去った直後、羽田は三人の悲劇に笑い転げた。


だがなんと羽田は島でたった一つの宿を経営してるといい、三人はそこでお世話になることにし、今彼の車でそこに向かっているという訳である。


車の中で詳しく事情を聞いた今でも、まだ羽田は会話にちょくちょく笑いを含んでいた。

それで隣で不機嫌にそっぽ向く炯斗を取り繕うとし、明るく言った。

「まぁ、うちには売店で着替えくらいも売ってるから」

「……別に……万一のために一泊分くらいの荷物は持って来てますよーだ…」


まるで返答が子供な炯斗の扱いに困り目線を後部座席に移す羽田。

が、少なからず笑われたことに腹を立てた女子は助太刀をしないことにした。

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