空耳此方-ソラミミコナタ-
すぐだと悪い気がして、二人の部屋にはしばらくたってから行こうと決めた。


自分の部屋のベッドに座り、背中に手を伸ばす。
そして、服とズボンの間から古びたノートを取り出した。


なんて場所に入れたんだ。


俺でも思う。

しかし、しまう場所も何もなかった故にTシャツの中という選択肢になってしまったんだ。

克己の痕跡――光の筋が溢れ出るこのノート。
どうしても、自分の目で見ておきたかった。


言乃や恵は別にいいのだが、一人の今がいい機会だ。


ベッドのライトの出力を最大に上げて、表紙を開いた。


「これ……日記帳だ…」


見た目に合わず、日付は最近のようだ。

数日前を捲ってみると、克己がこの島にやってきたという文章を見つけた。
だがあとは島への意気込みや日常しかない。


「めぼしい情報は……ない……のか?」


ページをまだ書かれていない先までパラパラとしていると、中に封筒が挟まっていた。

「手紙?」

宛名をみると、綺麗な字で『玲子姉さんへ』と書かれている。


ゴクリ、大きく息を呑む。

聞いても教えてくれなかった“玲子”に宛てた手紙。


今、克己の奥底に隠された部屋の前に、鍵を手に立っている。

果たして自分が入ってもいい部屋なのだろうか?


炯斗は深呼吸をして、慎重に鍵を鍵穴に、封筒の封を切った――――。


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