空耳此方-ソラミミコナタ-

すごすごと中庭を横切ったロビーに入ると、ちょうど恵たちが帰ってきたところだった。

「おー!おかえりぃー!」

炯斗が明るい調子で飛んで行くと、恵は弱く微笑んだ。
そんな恵に、眉をひそめる炯斗。

「なんかあった?」

「ううん」

笑ってそう言いつつも、裾を引っ張る恵。

(話は部屋で)

炯斗は無言で頷き、言乃に目配せする。
言乃が了承したのを見ると、刑事たちにお礼を言って恵は足早に部屋に上がった。

「あの子…帰りずっとあんな調子だったの。大丈夫かしら…」

恵の背中を心配そうに見つめながら恩河が呟く。
高橋は怪訝そうに恩河を見た。

「他に変わったことは?」

「いえ、特には…」

「大丈夫ですよ!」

二人は炯斗を振り向く。
その二人を安心させるようにニカッと笑って言った。


「どうせ昼飯あんまり食べなかったんで今辛いんスよ」

「そうならいいけど…」


すでに言乃も部屋に消えたようだ。

炯斗は小さく息を吐いた。

おじいちゃん探しに来て殺人事件
ダチが襲われるわさらに幽霊と一晩一緒だわ
加えて見知らぬ刑事たちと捜査

辛い。辛すぎる。

「……俺、怖がりだったら耐えらんないな…」


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