空耳此方-ソラミミコナタ-
「うあああぁぁぁ!!」
力の限り出すと息が切れた。
意味はない。
無性に叫びたかった。
言葉なんて思い付かないからただ叫ぶ。
それでも、潮騒は緩やかに返事を返してくれた。
「……何やってるんだろう、僕…」
砂浜に座り込み、手近にあった石を海に投げ込んだ。
僕は…玲子姉ちゃんが好きだ。
改めて確信する自らの気持ち。
しかし、憧れであり目標の透が立ちはだかる。
透は最大の敵であるに違いない。
同い年、幼なじみ、中学校まで同じ
克己に比べて有利な条件が揃い過ぎている。
「せめて、僕がもう少し年上だったらよかったのに…」
言っても仕方ないことはわかっている。
でも、言わずにはいられない。
玲子姉ちゃんは……僕を弟としか見てないから
克己の口から大きな息が漏れた。
潮騒はたまに強い音を響かせつつ、優しく小さな子どもを包む。
「……こんなこと考えてても仕方ないよね。……よっと!」
勢いをつけて立ち上がった克己。
その顔は暗くはない。
「僕がもう少し大きくなったらいこう。
よーし! 名前刻めるようなものはないかなっ!」
今度は、岩場に足を向けた。