空耳此方-ソラミミコナタ-

月明かりの照らす夜の散歩は、なんだかわくわくした。

尖ったものを探して歩いていくうちに、元の洞窟のあたりに戻ってきていた。

入り口が見えると、克己は少し立ち止まった。

……行き難い。

さっきは心配してくれた玲子の好意をはねのけてしまったのだ。

許してくれるかな?
こんな遅くに外に出ていって!って怒られるかな?

少しの期待と恐怖を抱いて、洞窟の内側を覗いてみた。


その瞬間、克己の四肢は完全に硬直した。





嘘……だろう……?



克己は今すぐに逃げ出したい衝動に駆られた。


希望としては今すぐその衝動に従って何も見なかったと叫びながら走って行きたい。


だが、一度止まってしまったものを自分の意志で動かすことは不可能に近かった。

限界まで開かれた目に映る光景。




やられた。



正直な感想がそれだ。
その光景を信じる云々の前。


嗚呼、大きくなったらだとか……そんなことを言っている暇は何処にもなかったんだ。




信じたくはない。





けれども、紛れもない現実。


其れは――体を重ね合わせて口付けを交わす、玲子と透の姿だった。




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