空耳此方-ソラミミコナタ-
「けど、それもうまくいかなかった。

バブルの崩壊で景気悪化。島の計画はおじゃんになった。

それでも残りの財産と力を使って、この花守荘と、断層の橋渡しになるロープウェイだけは完成させて、彼は島から手を引いた。

ロープウェイは島の生活にも必要だから島が経営し、ここは私が工事中に話をつけて改装してもらって買い取った。


そんなところだな。ここの歴史は」


そう締めくくり微笑んだ羽田は、どこか悲しげに見えた。

少し考えてから、言乃はペンを動かした。

【花守荘のオープンって最近なのですか?】

「そうだね…そろそろ六年経つかってところ」

「あの、工事中に改装を頼んだって内装もですか?」

「ああ、少しいじらせてもらったよ。でも外装は決まってたから、それにあわせてもらって宿泊施設としての機能を持たせてもらっただけだよ」

それを聞いて恵が驚きの声を上げた。
どうやら、よほどこの優雅な雰囲気の様子が気に入ったらしい。
すごいなぁ、などと顔を綻ばせ呟いていた。

【いじったとは、どういう?】

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