空耳此方-ソラミミコナタ-
ま、これで金も貰えるんだからいいか。
長身の男は気をとり直してほつれた髪の毛を直し、ジャケットの埃を払った。
よし、完璧
ショーウィンドウに自分を写し頷く。
そして大股にベンチの彼女に近づき、できるだけ大きな声でなるべく“らしく”見えるように、大げさに手を広げて言った。
「はーい、こんにちはー!
彼女今暇?だったら俺と遊ばない?」
ターゲットの彼女は驚いた顔で男を見た。
そのまま、しばしの沈黙。
男は笑顔も格好もそのまま固まる。
いらんことに周りの通行人まで固まって男を見つめる。