何度忘れようとしても
音の無い部屋でコートを羽織り、カバンを肩にかけて部屋の外に出る。

鍵をかけてエレベーターに乗った。

孝昭の、夢を見てしまった・・・。

そんな憂鬱な気分と引き換えに、今日のスケジュールで頭をいっぱいにした。
それはとても1日でやり終える事ができる量ではなかった。

マンションの外へ出ると冷たい風が頬をなでる。

大嫌いな冬の匂いを思い出させる感覚に、秋が深まってしまったなと残念に思った。

アスファルトをヒールで踏みしめながら駅へと急いだ。
それはいつもと変わりのない、私の一日の始まりだった。
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