本と私と魔法使い

消え溢れ

サリサはぴくり、と綺麗な眉を上げる。

「どういうことかしら?」
「言葉の通りよ。」


長い指が私の肌を撫でる。気を抜けばすぐに、私を殺しにかかってくるのではないかという危うさを感じて、悪寒が背筋を抜ける。


「あなたは、もうわかってるはずよ。…私の体を使っても何ににもならないこっ…」

力一杯サリサに私は首を締められる。首を締められると息が本当に出来ないんだ、生理的な涙が零れる。

「あなたに何がわかるのよ!!…世界で一番大切な人と…、いられない苦しみがあなたわかる…?…あたしはっ、満足に二人で過ごすことも出来なかったのに」

もう限界、というところで私の首から手が離される。けほ、けほと空咳が出た。

「だから嫌なのよ、最初から大切な人と過ごせることが当たり前な人達が…。あたしの望むものなんて一つも手に入らない…っ、だからあなたが必要なの」
「それは違う、…私がいても手に入らない…、だって、あなたが欲しいものは生きてなきゃ手に入らないものだもの」


冷水でもかけられたかのように、サリサの身体がぶるぶる震える。目を大きく開いて、私を見つめる。

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